【24】H.G.ウェルズ『タイムマシン』
- 作者: H.G.ウェルズ,佐竹美保,H.G. Wells,雨沢泰
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 単行本
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これは、時間を旅することのできる機械を発明したあるタイムトラベラーの物語。タイムトラベラーは、自らを実験台として、期待を胸に人類の未来へと旅立つ。ところが、未来社会はイーロイ人とモーロックス人の対立する社会だった…SF小説の父H・G・ウェルズのあまりにも有名な作品のフレッシュな完訳。 (「BOOK」データベースより)
802,701年後の世界を想像できますか?僕はできません。そもそも、この地球自体が存在しているのかも疑ってしまいます。
偉大なるSF小説の父、H.G.ウェルズはその世界をこの小説で見事に表現しています。まず802,000年後という桁外れの数字に、いきなりビンタをくらいます。そして、地上人イーロイ人と地底人モーロックス人の存在に心を揺さぶられ、さらに主人公の科学者とイーロイ人女性ウィーナとのロマンス、追い討ちをかけるようにタイムマシンが地底人に盗まれ、それを取り戻すための手に汗握るスリリングな展開に読了後の僕はすっかり放心状態。800,000年くらいタイムトラベルした気分です。
物語で主人公の科学者は地上人のイーロイ人にがっかりさせられます。なぜなら未来人は現在の人間よりも知識においても、芸術においても優秀だと思っていたから・・・。
イーロイ人はいかにも楽しそうに暮らしている。牧場の牛のように。かれらは敵を知ることがなく、したがって身をまもることも知らなかった。その運命も家畜の牛とおなじなのだ。人間の知性の思いえがいた夢が、こんなにはかなく消えたのかと思うと、ぼくは悲しかった。まるで知性の自殺だ。人はここちよい楽な暮らしを追いもとめた。いつまでも安全でゆるぎない、調和のとれた社会をつくろうとしてきた。そして、その目標を達成し、こういうふうになった。かつて、人の生活が完全に安定した時代があったにちがいない。金持ちは富とゆとりが、労働者は生活と仕事がうまくまもられていた。その完全な世界では、失業もなく、社会問題のおこるすきがなかった。それから、気の遠くなるほど長い平和がやってきた。(p.165)
そして、作者H.G.ウェルズが主人公の科学者の言葉を借りて訴えたかったのはこれだ。
人間の知性は、変化や、危険や、問題を解決することによって高められるものだ。ぼくたちは、とかくそういう自然の法則を忘れている。(p.165)
この言葉を忘れてはならない。人間は数々の試練や絶望を乗り越え発展を遂げてきた。便利で安全で快適な生活をひたすら求めた人間の行く末がこの「イーロイ人」なのだ。なんてったって最後は家畜のように地底人「モーロックス人」に喰われるのだよ!
結局、この科学者は命からがら一旦は現代に戻って来るのだが、またすぐにタイムマシンでどこかにいってしまった。いまだに帰ってきていない。なんてシュールなんだ!