じんの読書ノート

まぁ、とりあえず本でも読みましょうか。

【94-1】工藤 かずや&浦沢 直樹『パイナップルARMY 1』

パイナップルARMY (Operation 1) (小学館文庫)

パイナップルARMY (Operation 1) (小学館文庫)

傭兵として世界各地で戦ってきたジェド・豪士。戦闘インストラクターとなった今でも、彼の周りには戦いが絶えない…。単なる戦闘ものではなく、戦争が残した傷あとにも注目したヒューマン・アクション。

  

 元傭兵のジェド・豪士。数々の戦場でその名を轟かせてきた伝説の兵士。今の彼の職業は戦闘インストラクター。自分は戦わない、ただ依頼人を戦闘のプロに仕上げるだけと言いつつも当然、結構危険な目に遭っている。戦場を生き抜いてきた彼の血が心を沸き立たせるのかもしれませんね。この作品にはジェド・豪士以外にも魅力的なキャラクターがたくさん登場するので、それも人気の理由でしょう。内容はかなりハードボイルドに仕上がっています。

「誰にだって命より大切なものはある‼︎」(p.24)

【93】ピエール・ルメートル『その女アレックス』

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

 

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

 

 なんてったってアレックスです。あれだけのことをしておきながら、拉致されたあげくに涙声で「なぜわたしなの?」はないでしょう。それに、ネズミを利用してロープを切るなんて!なんて頭がいいんでしょう!古典的にもほどがあります。それにしてもアレックスの生命力はハンパないっす。残虐性もハンパないっす。これも『復讐』のなせる業なのですね。では、なぜヤツを殺さなかったのか?さすがアレックス、クレイジーです。この本の評価が高いのが最大のミステリーです。

【92】筒井 康隆『ロートレック荘事件』

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か?アリバイを持たぬ者は?動機は?推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

 何なんでしょうか?この感じ。

 アガサ・クリスティアクロイド殺しでしたっけ?「えっ?俺かよ」みたいな衝撃。

 それにしても、せつない話ですね。典子さんの日記はヤバイです。苦しいです。

 最初から仕掛けられたトラップに気づかずに、終盤のある時、「お前、誰だよ?」と思わずツッコミを入れました。まんまと作者の術中にハマったわけです。

 おそらく映像化は完全に不可でしょうね。 いい作品です。

【91】エレナ・ポーター『新訳 少女ポリアンナ』

新訳 少女ポリアンナ (角川文庫)

新訳 少女ポリアンナ (角川文庫)

 

 両親を亡くした11歳のポリアンナは、気むずかしい叔母、ミス・ポリーのもとに引き取られた。ポリアンナはどんなに辛いことがあっても、その中に「嬉しい」ことを見つけるとたちまち元気になれる。そのお父さんとの約束、「嬉しい探し」ゲームは街中に広がり、ミス・ポリーや大人たちとの冷たい心を変えていった。ところがそんなポリアンナが交通事故にあってしまい…。涙と笑顔いっぱいの不朽の名作が、いよいよ新訳で登場。(「BOOK」データベースより) 

 

ポリアンナ症候群は現実逃避の超楽天主義者だが、ポリアンナこそが現実の厳しさに正面から向き合い、打ちのめされ、そしてそれを乗り越えてきた人間なのである。小さいころから父親と遊んだ『嬉しい探しゲーム』こそがこの厳しい現実を乗り越え生きぬく知恵でありヒントでもある。彼女の『ゲーム』は瞬く間に街中に広まり相乗効果でみんなが幸せになっていく。そんな中、ポリアンナを自動車ではねた人間も『嬉しい探しゲーム』をしたとでもいうのか?「ポリアンナが死ななくてヨカッタ、ウレシイ」とでも思ったのか?この物語は決してハッピーエンドではない。

ポリアンナに言わせればこうだ。「わたしがわたしをはねたドライバーでなくて嬉しいわ」


「あら、もちろん、言われた御用をしている間も、ずっと息はしてますとも、ポリーおばさん。だけどそんなの、生きているうちに入りません。眠ってる間もずっと息はしているけど、それは生きているんじゃないんです。生きてる、っていうのは、したいことをすることなの。表で遊ぶとか、本を読む(もちろん、自分一人でね)とか、丘に登るとか、お庭のトムおじいや、ナンシーとしゃべるとか、昨日通ってきたこのおもいっきりすてきな街の、建物や、人や、通りのはしからはしまで、どこからどこまで、何から何までを見つけ出すとか。そういうのを生きる、って呼ぶんです、ポリーおばさん。息をしているだけじゃ、生きてると言えないわ」(p.71)
 男女ともに必要なのは励ましである。人間の自然な耐久力は強くするべきであり、けして弱めてはならない。…人の欠点をくどくどあげつらうより、長所をほめてやるのがいい。型にはまった悪い習慣から連れだしてやろう。人が本気を出し、実行し、達成できるように本当のよりよい自分を教えてやろう…美しく、あきらめない、人の手本になれる性格は周囲への影響力が大きく、場合によってはひとつの街をまるごと変革できる…人間は頭と心に持つものを外に向けて広げる。ある人が優しく親切な気分になれば、その隣人もほどなく同じように感じはじめるはずだ。だがその人が声を荒らげ、しかめ面をし、あら探しをはじめるならば、隣人もしかめ面にはしかめ面を、それも利子までつけて返してくるだろう。…あるだろうと思って悪いことを探せば、必ず見つかる。だが良いことが見つかると信じて探せば、必ず手に入る…(p.262)

【90】野口 聡一『宇宙少年』

15歳の寺子屋 宇宙少年

15歳の寺子屋 宇宙少年

 15歳のころ、スペースシャトルの打ち上げをテレビで見た僕は、衝撃を受けました。「宇宙に行きたい!」僕は宇宙を目指す、「宇宙少年」になりました。夢を目指す道のりのなかでは、いろんなことが起きます。ときには、怖さや不安にかられることもあるでしょう。そうして夢をあきらめてしまう人もいるかもしれません。でも、怖さも不安も、その正体は自分自身の心のなかにあるのです―。夢を現実にした宇宙飛行士・野口聡一さんの言葉から、悩みや不安を乗り越えるヒントを見つけよう。(「BOOK」データベースより)

 

宇宙飛行士になりたいと思いはじめた十代のなかばから、実際に宇宙に行くまでに、僕はおよそ二十五年の年月をかけています。挫折やまわり道もしたけれど、すべてが夢に向かっていくエネルギーになりました。夢を目指す道のりのなかでは、いろんなことが起きるものです。ときには怖さや不安にかられることもあるでしょう。でも、怖さや困難に負けてしまうと、先に進めなくなってしまいます。そうやって夢をあきらめてしまう人もいるかもしれません。でも怖さも不安も、その正体は自分自身の心のなかにあるのです。怖さの正体に向き合い、その先にあるゴールを見通せれば、きっと乗り越えるきっかけがつかめると思います。どんなときも、ほんの一歩ずつでいいから前に進んでみる。そして毎日、小さな一歩を繰り返していく。その勇気が持てたら、夢の実現にぐっと近づくことができるでしょう。(はじめにより)
怖さに負けないためには、大事なふたつのルールがあります。第一のルールは、怖さの正体を突き止めること。第二のルールは、怖さを乗り越えたときに得られるものを見通すことです。このふたつのルールを忘れずにいれば、怖さに負けずに進んでいけるはずです。(p.24)
僕は、一瞬で終わる死というできごとは怖いと感じません。死ぬとその瞬間になにもかもなくなりますが、苦しみも痛みも感じなくなるのですから、怖いと思わないのです。厳密には、僕は死ぬのが怖いのではなく、嫌だと感じていたのでした。そこで、次の疑問が立ち上がります。なぜ僕は死ぬのが嫌なのでしょう?「自分がしたかったことをできずに終わってしまうことが悔しいんだ」。そう思い当たりました。僕にとっては、死とは「恐怖」ではなく、むしろ「悔しさ」や「未練」という言葉に置き換えられるものに近かったのです。つまり「この世から自分が突然いなくなることによって、目標を成し遂げられない無念さ」が、僕が死を避けたい理由だったわけです。これに気づいたとたん、死は得体の知れないものでも、怖いものでもなくなりました。(p.34)
 

 自分がもしも死んだ場合に、何をやり残したと感じ、何に未練を感じるだろうか?

 今、自分のすべきことは何なのか?

 ちゃんと考えておかなければいけませんね。

 
後悔や未練から逃れる方法は、たったひとつしかありません。それは、いまという時間を大事にして思う存分生きることです。(p.36)