じんの読書ノート

まぁ、とりあえず本でも読みましょうか。

【23】モーリス・ルブラン原作 南 洋一郎文『怪盗紳士』

怪盗紳士 (シリーズ怪盗ルパン)

怪盗紳士 (シリーズ怪盗ルパン)

ニューヨークへ向かうフランスの豪華客船プロバンス号。乗船客はおそるべき知らせにふるえていた。金髪で、右腕に傷、頭文字Rの怪人物、うわさに高いルパンが、この船の一等船客にまぎれこんでいるという。高慢な大金持ちから金品をぬすみ、まずしい人には力をかす、フランスの英雄的大泥棒、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの登場だ。 (「BOOK」データベースより)

ふと懐かしさから、つい手にとってみる。昔よく目にした児童書のあの大きな文字で書かれたページをペラペラめくる。あぁ、なんということだろう。止まらない。文字通り前のめりになる。凄まじい吸引力。その時の僕は確かにあの頃のボクになっていたはずなんだ。

原作者のモーリス・ルブランは1905年に短編「アルセーヌ・ルパンの逮捕」を書き上げた。もともと、あまりぱっとしない作家だったルブランも単発のつもりでいたらしいがこれが大当たり。1941年に76歳で亡くなるまで、ルブランは「怪盗ルパン」シリーズを息つく暇もなく書きつぎました。

この巻「怪盗紳士」に収められた5つの短編は、シリーズの第1作から第5作にあたります。「大ニュース・ルパンとらわる」「悪魔男爵の盗難事件」「ルパンの脱走」の3編は連続した物語だが、「奇怪な乗客」ではルパンの超人的な運動神経と天才的な頭脳と紳士的な人柄を紹介し、「ぼくの少年時代」ではルパンが盗賊になった生い立ちが語られている。しかもこの2編は作者ルブランに友人のアルセーヌ・ルパンが物語を語るという、じつに味わい深い表現でつづっている。

この「シリーズ怪盗ルパン」のクレジットが「訳」ではなく「ルブラン原作・南 洋一郎文」となっている理由は、南 洋一郎が原作にもとづき、少年少女のために新しく書き改めたものを収めているからです。原作のエッセンスを損なわないように大人むけの物語を子供たちにも読めるように書き改めたのです。今日の日本のルパン人気における彼の功績は計り知れませんね。