じんの読書ノート

まぁ、とりあえず本でも読みましょうか。

【59】谷崎 潤一郎『痴人の愛』

痴人の愛

痴人の愛

 

生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの回りにはいつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。知性も性に対する倫理観もない〝ナオミ〟は、日本の妖婦の代名詞となった。(「BOOK」データベースより)

 譲治、きみってやつはどこまでお人よしなのさ。結局、あの女の思い通りに操られ、身を滅ぼしていくんだよ。自分が破滅の人生に堕ちていく姿を「滅びゆく美しさ」と肯定してやしないか。本当に馬鹿な男だよ、きみは。僕にそっくりだ。

「浜田君!僕は、僕は、・・・もうあの女をキレイサッパリあきらめたんです!」「御尤もです!そう仰しゃるのは御尤もです!」(p.308)