【53】立川 談春『赤めだか』
- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
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サラリーマンより楽だと思った。とんでもない、誤算だった。落語家前座生活を綴った破天荒な名随筆。(「BOOK」データベースより)
すいません、てっきり俳優さんだとばかり思ってました。落語家、談春さん。談志師匠のお弟子さんだったんですね。
庭の水がめに飼っている金魚は、金魚とは名ばかりで、いくらエサをやってもちっとも育たなかった。僕達は、あれは金魚じゃない、赤めだかだ、と云って馬鹿にしていたが、大きくならないところも談志(シショウ)好みらしく可愛がっていた。(p.51)
つくづく立川談志という人は魅力的な人ですね。弟弟子の志らくさんの登場に脅威を感じる談春さんにこう言います。
「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱味を口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬と云うんです。一緒になって同意してくれる仲間がいれば更に自分は安定する。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。しかし人間はなかなかそれができない。嫉妬している方が楽だからな。芸人なんぞそういう輩の固まりみたいなもんだ。だがそんなことで状況は何も変わらない。よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿と云う」(p.116)