【12】カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
- 作者: カズオイシグロ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04/22
- メディア: 単行本
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自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に…。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく―英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』に比肩すると評されたイシグロ文学の最高到達点。アレックス賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
カズオ・イシグロさんがインタビューで、この作品に込めたメッセージは何ですかと聞かれてこう答えていた。
「思っているよりも人生は短い、この限られた時間の中で大切なものは何か?」
僕的には、おそらくもっと深いテーマが隠されているんじゃないかと思わせる作品でした。
それにしても、この読了後の虚しさは何なんだ?
彼ら(提供者たち)は正確には、人間ではない。
だから、心を持たせてはいけなかったんだ。
愛する心がお互いを苦しめてしまう。
だからこんなに虚しくなる。
保護官たちもある意味、人間ではない。
普通の神経ならばこの施設にはいられない。
提供者たちを必要とするこの社会の人間たちも人間ではない。
まっすぐ純粋に命を全うした彼らこそが本当の人間なのかもしれない。
「生きる」とは?
「人間」とは?
「愛」とは?
この作品も答えてはくれない。
いつも問いかけてばかり。
そういうものなんだ。
さっそくジュディ・ブリッジウォーターが聴きたくなりましたが、実在の人物ではないそうです。
ちょっと残念。