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じんの読書ノート

まぁ、とりあえず本でも読みましょうか。

【107】又吉 直樹『夜を乗り越える』

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 芸人で、芥川賞作家の又吉直樹が、少年期からこれまで読んできた数々の小説を通して、「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」「人間とは何か」を考える。また、大ベストセラーとなった芥川賞受賞作『火花』の創作秘話を初公開するとともに、自らの著作についてそれぞれの想いを明かしていく。「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、文学に出会い、助けられ、いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、著者初の新書。(「BOOK」データベースより)

「なぜ本を読むのか?」と聞かれたら、「おもしろいから」と答えるのが、自分にとってはもっともしっくりきます。(はしがきより)

そうですね、僕もそう思います。おもしろいから本を読むんです。でも、読んだ後おもしろくなかった本もあります。あり過ぎます。

本を読むことによって、本と話すことによって、僕はようやく他人と、そして自分とのつき合い方を知っていったような気がします。(p.40)

又吉さんにとって「本」は「神」と同じなのでしょうか。僕には恐れ多くて語れません。

当時僕が本に求めていたのは、自身の葛藤や、内面のどうしようもない感情をどう消化していくかということでした。近代文学は、こんなことを思っているのは俺だけだという気持ちを次々と砕いていってくれました。その時、僕が抱えていた悩みや疑問に対して過去にも同じように誰かがぶつかっていて、その小説の中で誰かが回答を出していたり、答えに辿りつかなくとも、その悩みがどのように変化していくのかを小説の中で体験することができました。もちろん、そこから強引に自分の答えを探すような読み方はしませんが、あらゆる小説に触れることによって、視点を増やすことができました。(p.54)

 本を読むことで人間の厚みというか、奥行きというか、幅は広がりますよね。僕は年齢を増すごとにお腹が出てきました。

 視点が増えれば増えるほど問題も立体的になります。物事の本質に近づくことができます。今、視点がいくつかある、考え方が複数持てるという言い方をしていますが、自分とは異なる複数の考え方を知ることができるという認識でも良いかもしれません。なぜ多様な視点や考え方を持つ必要があるのか。極論を言うと全人類が同じ考え方しか持っていないとしたら、ひとつの失敗で全員が死ぬからです。(p.136)

極論を言うと、たった一人の狂った独裁者が核兵器を複数落とせば全世界が滅びるからです。いつも誰かに支配されている我々はいつになれば夜を乗り越えられるのでしょうか?