【103】伊坂 幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス(「BOOK」データベースより)
まさしく『映画向きエンターテイメント小説』ですね。なんてったってタイトルがいいじゃないっすか!
「このことから何を学べばいい?」響野が手を広げる。「教訓は何だ?」「『世の中、強盗は自分たちだけだと思っていたら大間違い』ってことだ」成瀬はもう一度車の去っていった方角に目を向けた。(p.108)
銀行強盗も、市役所の公務員も、生きていくのに大切なのはイマジネーションだ。(p.118)
「本に書いてあることはたいてい、でたらめだ。目次と定価以外全部嘘だ」(p.131)
人の上に立つ人間に必要な仕事は、「決断すること」「責任を取ること」の二つしかない(p.157)
私の上司に言ってやってほしいセリフですね。
「感じたこと全部を、わざわざ口に出す必要はないんだよ。誰もが心の中で思っているだけならば、世界は平和だ」(p.169)
愛をささやくことが許されなければ未来さえもないですね。
「あれはな、事実上の決勝戦って言われてたんだ」「一回戦で負けた子だってきっと同じことを言ってるよ」(p.226)
「世の中には毎秒何人もの人間が死んでいってるんだ。いちいち驚いていられるか。むしろ誰も死ななくなったら、そっちのほうが私はびっくりするね」(p.243)
「そうだな、ポストが赤いのも、野球に延長戦があるのも、全部、おまえのおかげだよ」(p.249)
「言ってしまえばたいした内容ではないな。映画なら三十分もかからないで再現できる。漫画なら二ページもいらない」(p.250)
『ようするにアメリカがいけないんだよ。何でもかんでもアメリカだ。世の中の犯罪や生活の大半がアメリカ流で、事件を起こすのもあの国だ。そもそもコロンブスが大陸を発見したのがいけないんだな。恨むべきは、コロンブスの双眼鏡だ』(p.256)
「人が考えることはいつも理に適っているわけじゃない」(p.271)
「見栄や自尊心ね」「人が穴に落ちるときにはたいてい、そういうものが原因なのよ」(p.282)
「動物は強者に従うけど、人間は強そうな人に従うだけなんだ。絶対的な強さなんて分からないからね、強そうな人とか、怖そうな人とかさ、そういう、『強そうな』っていう幻想に騙されちゃう。」(p.326)