じんの読書ノート

まぁ、とりあえず本でも読みましょうか。

【61】原田 宗典『優しくって少し ばか 』

優しくって少しばか (集英社文庫)

優しくって少しばか (集英社文庫)

 

男は、いけない。女もいけない。いけない二人が一諸にいるから、なおいけない。けれど一人じゃいられない。答えは出ないと知りながら、次から次へと問題提起。重なったり、離れたり。擦れ違ったり、傷つけたり。危うい男と女の関係を縒り合わせて編んだ、問題の多い六つの中短編。原田宗典の第一作品集。 (「BOOK」データベースより)

<優しくって少し ばか>

 標題作。面白い字面。会話文以外に読点「、」がついていない。全体的にほんわかムードで優しくって少し「お」バカなカップルが登場する。

 電話中の彼女と『例のパン屋』にメロンパンを買いに行きたい彼氏との筆談のやりとり。『HARUMI MIYAKO』のカセットケースの文字。彼女の右足のアンクレットの理由。去年の暮れに下らない連中が主催した下らないパーティーの下らないビンゴゲームで当てた1200枚で成り立っている100年先までのカレンダー。『愛』という言葉の見た目と『アイ』という音の響き。キース・ジャレットのテープと三つの約束が書かれた手紙。

    ちょっとおバカだけど、とっても優しい。

<西洋風林檎ワイン煮>

 サスペンスですね。・・・何を煮てるんだ?

雑司ヶ谷へ>

 彼がバラバラにしたものは、撮影用のヤドカリとお腹の中の子供と彼女の心。そして二人の未来。

<海へ行こう、と男は>

 このジューシィ・ガムって?

ポール・ニザンを残して>

 車のトランクに何入れたんだよ。

<テーブルの上の過去>

 自分で勝手に作り上げてしまった過去が存在するかもしれないですね。

「どうする?未来の方も、やってみる?」(p.287)