【115】青柳 碧人『浜村渚の計算ノート』
役に立たないからと、数学が義務教育から消えた。抗議する天才学者ひきいる“黒い三角定規”は、テロ活動を開始する。数学を学んだ者は組織に洗脳されているおそれが強いことが発覚し、普通の女子中学生・浜村渚が警視庁に助っ人として起用された。警察もビックリする彼女の活躍で、事件は次々と解決する。第3回「講談社Birth」小説部門受賞作。(「BOOK」データベースより)
ゼロで割ってはいけない理由が面白い。
「君、0×100はいくつかね?」
「0では?」
「そのとおり。では、君!」
「0×13532は?」
「やっぱり、0?」
「そのとおり」「0にはどんな数をかけても0になる。まさに、あらゆる数字を自分の中に内包してしまう、悪魔の数字だ」「では聞きたいが、0÷4はいくつかな?」
「0」
「正解。では、4÷0は?」
「0!」
この答えを聞くなり、及川と浜村は、そろえて頭を振った。
「4÷0=0じゃないです」
「何?」
「そもそも、4÷0なんて計算は、しちゃだめなんです」
浜村渚は緊張した雰囲気を和らげようとしたのか、口元に少し笑みを取り戻し、そのままシャープペンをノートの上に走らせた。
『1×0=0、2×0=0』
「いいですか?これが成り立つとすれば、ゼロイコールゼロだから・・・」
『1×0=2×0』問題ない。
「で、ここで『0で割っ』ていいなら、両辺を0で割ることができるはずなんです」
すると、僕たちの目の前には、世にも奇妙な等式が現れた。
『1=2』・・・?
「だから、『0で割る』っていうのは、やっちゃダメなんです。こんなことをしたら、数学の秩序がメチャメチャになっちゃう」(p.84)
「これは、私たち人類が悪魔と交わした、数学史上最も重要な約束の一つです。」(p.119)
【113-2】柳本 光晴『響 〜小説家になる方法〜2』
出会うべき二人だけど、まだ出会えない?
15歳の鮎喰響は、 文芸誌の新人賞に自分への連絡先を伏せて小説を送りつける。
編集者の花井は、その小説を読み、この作者なら文芸に革命を起こせる、文芸の力で世界を変えられる、と確信。
名前しか手掛かりがない中、響を捜し出そうとする。
そうとは知らない響は、周囲とギクシャクしながらも高校の文芸部に入部。
みんなと部誌を作るため新たな小説の執筆に取りかかる。
北野武監督作品ばりのバイオレンスな響の立ち振る舞いにいつもドキドキしちゃう。かたやリョータとイチャついて赤面する響に萌える。
そして、ついに二人は出会う。編集者・花井と響は祖父江秋人の書斎で遭遇。
あなた真顔でウソがつけるのね。気持ち悪い・・・(p.162)
【114】富永 裕久『図解雑学 パラドクス』
自己言及のパラドクスやアキレスとカメのパラドクスなど、古今東西のパラドクスを数多く紹介。そのうえでパラドクスへの考え方も、しっかり丁寧に解説した。(「BOOK」データベースより)
パラドクスの意味は「逆理、逆説」「相互に矛盾する命題が、ともに帰結し得ること。また、その命題」
・・・なんのこっちゃ?
そもそもは「正規な」という意味の「オーソ」に対して「並んだ、異なる」という意味の「パラ」が、「意見」を表す「ドクソン」と合体してできたらしい。正統的意見の「オーソドクス」に対して、ちょっと横から斬り込んだ意見が「パラドクス」なのだ。ちなみに、オーソドクス(正統)の反対語はヘテロドクス(異端)である。
一番オーソドクスなパラドクス(?)は『うそつきのパラドクス』だろう。
ある人がこう言った。
「私がいま話していることはウソです」
・・・・・一瞬考えてしまうが、どないやねんとツッコミたくなる言葉である。
この類のパラドクスは身の回りにもたくさんある。例えば「張り紙禁止の張り紙」「静かにしろ!という怒鳴り声」「例外のない規則はないという規則」「その質問には回答しないという回答」「私の命令には従うなという命令」「この賭けに私が勝たない方に賭ける」「あなたとの約束を守らないという約束」「後ろの人、聞こえなかったら手を挙げてください」など。
・・・・・どないやねん。
『人食いワニのパラドクス』
赤ちゃんを抱いた母親が散歩をしていたときのこと。突然、ワニが現れて、赤ちゃんを取り上げてしまった。ワニの言うことには、「この赤ちゃんを食べてしまおう。ただし、おまえが、これからオレのすることを正しく言い当てたら、赤ちゃんは返してやる」。そこで母親はこう答えた。「あなたは、私の赤ちゃんを食べてしまいます」
・・・・・どないやねん。
『抜き打ちテストのパラドクス』
ある先生が抜き打ちテストをすることを生徒の前で宣言した。「今度のテストは来週の月曜日から金曜日のいずれかの日に行う。ただし、抜き打ちテストだから、当日の朝、その日がテストであることが予測できないように行う」と言うのである。ところがこれを聞いたある生徒が「先生、そんなテストはできませんよ」と言いだした。
・・・・・なんで?
「もし来週木曜日までテストがなければ、私たちは金曜日の朝、その日にテストがあることがわかります。だから金曜日に抜き打ちテストはできません。ところが、金曜日にテストはできないのだから水曜日までテストがなければ、木曜日の朝に、このテストがあることがわかってしまいます。だから木曜日もテストは実施不可能です。同じように水、火、月ともテストは行えないのではないですか」
・・・・・どないやねん。
『アキレスとカメのパラドクス』
俊足のアキレスと、足の遅いカメが競争した。ただし、同じ位置から走り出したのでは勝負が見えている。そこでハンデをつけてアキレスがカメの後方100メートルからスタートした。アキレスは秒速10メートル、カメは秒速1メートルで走る。アキレスがカメが最初にいた地点に達するのはスタート10秒後である。アキレスはカメに追いついたと思ったが、歩みの遅いカメも10メートル先に進んでいた。さらにアキレスはその10メートルを1秒で走ったが、カメは1メートル進んでいた。さらに、アキレスがその1メートルを進んだとき、カメは10センチ進んでいた。さらに、アキレスがその10センチを進んだとき、カメは1センチ進んでいた。以下これが続き、アキレスは決してカメを追い抜けない。
・・・・・どないやねん。
『砂山のパラドクス』
砂山がある。そこから砂を一粒取り去っても、それは砂山と呼べるだろうか?砂の粒が一粒ある。これは砂山だろうか?
砂一万粒は砂山である。
砂n粒が砂山なら、砂n−1粒は砂山である。(砂10000粒が砂山なら、砂9999粒は砂山である)
砂一粒は砂山である。(砂2粒が砂山なら、砂1粒は砂山である)
・・・・・かなり苦しいが、この理屈だと髪の毛が一本でもハゲではない。(当然わたしはハゲではない)
ああ、この世はなんて矛盾であふれている世界なのだ!(嘆き)
【113-1】柳本 光晴『響 〜小説家になる方法〜1』
ギクシャクは創造の母! とある文芸編集部の新人賞宛に送りつけられた、直筆の投稿原稿。 編集部員の花井は、応募条件を満たさず、 ゴミ箱に捨てられていたその原稿を偶然見つける。 封を開けると、これまで出会ったことのない 革新的な内容の小説であった。 作者の名は、鮎喰響。連絡先は書いていない・・・
リョータくんは響ちゃんの小説、読んだことある?
は?ないです・・・っていうかあいつ、小説かいてるとかリカさんに言ったんですか?
いや、言わないけどさ。小説好きな子ってのは例外なく自分でも小説書いてるよ。なんせ特別な道具も技術も必要ないからね。私はあの子の書いた小説、読みたいな。すごいの書けそうだもん。人間観、死生観・・・響ちゃんの目からはこの世界はどう見えてるのか・・・とんでもない物語ができそう・・・(p.168)
文芸部部長のリカは響の作品を読んで驚愕する。