【112】北川 恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだった―。スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。(「BOOK」データベースより)
「お前なあ、今の日本では、そんなにすぐに仕事辞めるなんて、無理なんだよ」
「なんで?辞表出したらそれで終いや」
「簡単に言うなよ」
「簡単なことやろ」(p.108)
主人公の両親との会話が逸品。
ーー元気でやっているか。
ーーうん。
ーー仕事はどうだ。
ーーうん・・・まあ・・・。
ーーそうか・・・。
親父は少し沈黙した後、こう続けた。
ーーお前はまだ若いんだ。今のうちにいくらでも失敗したらいい。(p.175)
ーーもし・・・もしだけど、俺が会社辞めたいって言ったらどうする?
ーーあーら、別にいいんじゃない?
母の答えには、戸惑いも迷いも感じられなかった。(p.177)
1人で悩まなくたっていいんじゃないか?
気楽にいこうぜ!
【111】住野 よる『君の膵臓をたべたい』
ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。 それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。 そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。 読後、きっとこのタイトルに涙する。デビュー作にして2016年本屋大賞・堂々の第2位、 75万部突破のベストセラー待望の文庫化!
正直、泣けない。が、せつない。甘酸っぱくて、痛がゆい。これは決してハッピーエンドじゃない。消化不良な感じがしてスッキリしない。なんでだろう?やはりこのタイトルでしょうね。つまり、膵臓は食べちゃダメってこと。まんまとやられました。
まだ読んでいない君は【どこで泣いたらいいかわからない】くんにならないように。
「違うよ。偶然じゃない。私達は、皆、自分で選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」(p.197)
【109】月村 了衛『土漠の花』
ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。男たちの絆と献身を描く超弩級エンターテインメント!(「BOOK」データベースより)
手に汗握るアクションエンターテイメント小説。仕方がないが戦闘描写の割合が多い。こういうのは疲れる。専門的な武器の名称を挙げられても困る。リアリティか。現実ではあってはならないことだが、ありそうで、なさそうで、娯楽として楽しんでいいものやら。なんだか複雑な心境。砂を噛むような。土漠だけに。
【108】中村 文則『教団X』
謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者最長にして圧倒的最高傑作。(「BOOK」データベースより)
長い。長すぎる。ここまで長くする必要があるのか。盛り沢山。サービス精神旺盛な夏休みの宿題のように。カルト教団のオカルト作品。言いたい放題のカオス状態。
序盤の「意識よりも先に、脳が既に反応している」のくだりは興味深いところでした。この本を手にしたのも『脳が全てを決め、この私「意識」はただそれをなぞってるだけ』なのですか?主よ!